12月

    

【Team GB】

 2016夏のオリンピックは、ブラジルのリオデジャネイロで開催され、初めての南米開催となりました。開催前、開催中に、競技以外のことで取りざたされましたが、競技には大きな影響もなく無事に閉幕したように感じています。いよいよ東京2020にバトンが渡った、というところです。
 ところで、これまで多くの都市(国)で、オリンピックが開催されてきました。開催国は、ホスト国として、あらゆる資源を活用して選手強化をはかり、好成績を収めてきました。また、その貢献の一つに、近年のスポーツ科学研究によるサポートがあるのはご存じの通りです。ホスト国が、開催した年のオリンピックで活躍するのはよく知られていますが、たいていの場合、次のオリンピックでは、メダル獲得数を減らしているのが常でした。
 ところが、例外をもたらした国があります。どこでしょうか、分かりますでしょうか? それはイギリスです。ロンドンオリンピックでのメダル獲得数は、 65 個であり、リオデジャネイロでは 67個となり、ホスト大会の次回大会で唯一、メダルを減らしていない国となりました。
 では、その理由は何だったのでしょうか?もちろん多くの要因があったと思いますが、先日、イギリスのノッティンガムで行われた英国スポーツ運動科学会で、リオデジャネイロオリンピックのイギリス代表統括を担当した、マーク・イングランドさんの基調講演から、その要因を考えてみました。
 マークさんの講演のアウトラインは次の通りでした。
01 Clarity of our rule
02 Understanding the playing field
03 Forensic understanding the environment
04 Create the right structure & pick the right team
05 Create and believe a mission
06 Create a optimal team
07 Create the optimal environment Performance first principles
08 Outcome
このうち、05と06について少し紹介します。

 05 Create and believe a mission における、mission(使命)とは、「歴史をつくれるチームにする」ということであり、このことをチーム全体でつくりあげ、信じ切ることが大事であることを徹底的に浸透させたことが大きな聖子につながっています。そのためには、ロンドンオリンピックで標準となったもの以上の準備、サポート、パフォーマンスを上げる、というミッションの具体化が進められました。
 06 Create a optimal team においては、「英国は一つのチームである:one team GB (Great Britain)」ということを選手、スタッフに常に意識させたということです。選手は、誇り(pride )、尊敬(respect)、一体感(unity)、責任(responsibility)をもって大会期間中、自らの競技に専心し、自競技がないときには、みずからのTeam GBとして他競技の応援することが徹底されていたようです。もちろん、選手、スタッフの行動には、高い意識と思いに裏打ちされてのことと考えています。
 一つにまとまる。言葉は簡単ですが、種目も違い、年齢、キャリアも違う多様で、かつ大人数の集団を一つにまとめるには、missionを個人レベルから全体レベルまでを通じて徹底し、概念的なものだけでなく、具体的な行動にまで定着させることが極めて重要であることを学びました。この徹底が、イギリスチームの成果につながったのでしょう。

 スポーツのみならず、あらゆる組織、集団、社会においても大事な教訓になると感じました。
[20161201 伊坂]


8月

    

【マスターズアスリート 宮崎秀吉さん】

 いま、リオデジャネイロでは、オリンピック大会真っ盛りです。オリンピックの後は、パラリンピック大会です。2020年は東京でオリンピック・パラリンピックが開催されますが、2021年に日本で開催されるスポーツの世界大会は何かご存じですか?関西で開催されます。ワールドカップラグビーではありません。ワールドカップラグビーは、2019年です。
 そうです、『ワールドマスターズゲーム』です。ワールドマスターズゲーム2021が関西で開催されます。何と記念すべき10回大会で、アジア開催は初めてのことです。競技種目は、これから発表されますが、 個人種目である、陸上競技、水泳、アーチェリー、柔道、ウエイトリフティング、団体種目である、バスケットボール、ソフトボール、ハンドボール、ラグビーフットボール、 セーリング、水泳、などが予定されています。参加条件は、「年がいっていること」「参加費を払うこと」が主なものです。“日本代表”になるチャンスですので、年齢が25歳以上(種目によってはそれ以上)の方はチャレンジして下さい。
 さて、表題の宮崎秀吉さんです。マスターズアスリートの代表格で、多くのファンがおられます。本にもなっています。なんと、競技を始められた(スポーツを始められた)年齢が92歳。そこから、陸上競技のトレーニングをはじめて、100歳の100m世界記録を樹立(陸上、水泳などの記録は、5歳刻みで認定さています)。昨年は、なんと105歳の年齢区分で、100mと砲丸投の世界記録を樹立されました。これらの種目の年齢区分はそれまで、100歳でしたが、105歳のスーパーアスリートが誕生しました。
 今も早朝からトレーニングされ、朝、昼、夜と体操、補強運動を欠かされないとのこと。健康長寿のお手本のような方です。
 いくつになっても、夢中になり、チャレンジすることが人生を輝かせて長寿につながるのでしょう。その意味では、スポーツはいくつになっても本当に良いものです。
[20160818 伊坂]


5月

    

【未来の働き方】

 いま学生に無くなって困るものは?と質問するとおそらく大半は、「スマホ」と答えるかもしれません。ネット接続によって色んな情報、機能が手元に集約されて非常に便利です。ネットを通じた連絡、電話でのコミュニケーション、ネット決済、学習アプリ、辞書、カメラ、ビデオなど、片手の中にあらゆる機能が収められています。アポロ11号が月面着陸したときに管制制御した当時のコンピュータを遥かにしのぐ性能が今のスマホにはあります。
 このようなネット社会が、さらに進展しIoT(Internet of Things)時代になってきています。これはあらゆる「もの」がインターネットにつながり、センサーと通信機能を持った「もの」が、情報を計測・観測して、判断して、フィードバックを与えることになります。さらには「もの」からの情報が集約され莫大なビックデータをAI(Artificial Intelligence)人工知能の技術により解析し、行動・判断の情報を返すようになります。例えば、ネットである本を検索していて、数日経って別のことをネット検索していると、関連する本の広告を目にすることがあると思います。これなどもAIによる解析によるプロモーションです。別の例では、ソファが欲しいと思って検索していて、数日後に初めて訪れた家具に入った瞬間に店員から名前を言われ、ソファの選択肢を的確にアドバイスされセールスされる、ということが起こります。なぜ、このようなことができるかというと、「検索する」ことで興味・関心の情報が集められ、ネット上のスケジュールから予定が読み解かれ、SNSなどから本人の顔などのデータが取得され、店の入り口の防犯カメラによって、本人の来店が認証された時には、欲しいソファの選択肢、名前、その他のプロフィールが店側にはわかっています。
 このように人の行動について、ネットにつながった多くの情報をAIが判断しその結果を経済的活動に活用することは既に始まっています。そうするとどうなるかといえば、研修してもなかなか成長しない社員を雇うよりは、優秀なAIに投資するようになります。おそらくその傾向はこれから益々加速されるでしょう。いま日本においては、小学校からキャリア教育が始まっていますが、この世代がバリバリ働き出す頃には、今の仕事の半分は無くなり、新しい仕事に置き換わると言われています。場合によっては会社そのものの存続、存続形態も大きく変わると言われています。
 そのような近未来において重要になってくるのは、人間でしか生み出せない高度な価値を生み出す人です。『未来から選ばれる働き方』(神田、若山著、2016)によれば、コネクティング・インテリジェンス(connecting intelligence)が必要であることが強調されています。一人の情報、処理では追いつかない時代にあって、コンピュータの情報も駆使しながら、さらには多くに人々をコネクトして巻き込み、力を引き出しながら、新しい価値を創造していく、起業家的マインド、変容型リーダーシップ持った人材が求められます。
 そのような人材になるためには、失敗を恐れず果敢にチャレンジすること、自己変革を起こしながら、楽しみながら明るく行動できることのようです。このような人材・若者が本学で育ち、輝く未来を拓いてくれることを願っています。
[20160528 伊坂]


4月

    

【ジョコビッチの生まれ変わる食事】

 既に読まれた方も多いと思いますが、最近、表題の本を読みました。ジョコビッチとは、現在、世界ナンバー1のテニスプレイヤー、ノバク・ジョコビッチです。
 ジョコビッチは、世界トップレベルになったときに大きな壁にぶち当たります。いつもここぞというときに、腹痛をおこしたり、集中力が切れたり。その原因に「グルテン」があったようです。食事改善をおこない、グルテンフリーの食事に代えてから、急激にパフォーマンスが高まり、安定してきて、現在、世界王者に君臨するようになりました。
 我々の身体は、食物がなければ生命を維持することができません。常に新陳代謝を繰り返しながら、各組織は再生されます。同時に、日常生活、身体活動のエネルギーも補給されなければ活動性を維持することはできません。ましてや身体活動、トレーニングを活発に行うアスリートにとっては、食事(栄養)は、パフォーマンス向上のためのトレーニングと同等に重要なものです。
 ただし、頭ではその重要性を意識していても、日常の食生活の具体的な行動につながらないアスリートも多くいます。特に、大学生アスリートの食事は問題が多いと指摘されています。激しい強化合宿中には、きちっとした食事が出るので調子よくなり、合宿からもどり下宿になった途端に調子が悪くなる、という嘆きをコーチから聞くこともあります。「食」は人+良 を組み合わせた字です。是非、自らの身体、パフォーマンスを良くするという意識で、アスリートは食事に取り組んでほしいと願っています。
 ジョコビッチは、食事のルールとして次の4つを挙げています。

① ゆっくり意識的にたべよ

② 肉体に明確な指示を出せ

③ 前向きであれ

④ 量ではなく、質を求めよ
 今、食べているものがどのように身体に効くのかを意識して食べることを示しています。これはトレーニングと同じです。いまやっているトレーニングが何に効くのかを「意識」して取り組む、という意識性の原則につながります。
 また、この本にはジョコビッチの生まれ育った国が置かれた状況にも書かれています。ジョコビッチは、現在、スロベニア出身ですが、もともとユーゴスラビアという国から分離・独立しています。ヨーロッパにおける民族紛争の激しい地域での経験から、人間としてどのように営むのか、について次のような想いを語っています。 「どこも痛くないときは、小さな石を靴の中に入れて、歩きなさい」
 なぜなら、こういうことをすれば他人の痛みに思いを致すことができるからだ。つまるところ、私たちは地球上にひとりぼっちになるために生まれたわけではない。私たちはお互いから学び、団結してこの星をより住みやすい場所にするために創られたのだ。
 そしてイギリスの宰相チャーチルの言葉、「私たちは得るもので生活するが、与えるものによって人生を形作る」を引用して、つまり周囲の人々に与えれば与えるほど、あなたの魂は大きく成長し、人間としても大きくなれるのだ。と激しい戦闘を経験した人間としての深い洞察を込めています。
 最後に、『自分を制御できる力の大きさが、あなたの人生の質を決める』と食事、生活、トレーニング、仕事に通じる感慨深い言葉で結んでいます。 一読を勧めたい本です。
[20160426 伊坂]


2月

    

【春合宿】

 中学生の頃に習った英語に、Spring has come.(春がやってきた)というのがありました。春一番が各地で吹き始め、いよいよこれからというところです。もちろん、spring は、「春」を意味しますが、別の意味で「バネ、弾性」という意味もあります。ベッド、トランポリンなどに使われているスプリングは、こちらの意味です。
 春はまさに生命、泉がわき出るイメージであり、「青春」は人生の中でもっともエネルギー、生命力がコンコンとわき上がる時期を指します。まさに、これから世に出る若者が、バネをためてピョンと跳びはねる時期といえます。
 この2,3月は、陸上部も次期のシーズンに向けて春合宿を行っています。来たるべきシーズンでの成果を最大にすべく、自らのバネを巻き上げ、エネルギーを蓄えて、シーズンで爆発することを願いながら合宿を過ごしてきています。もちろん、生身の身体ですので、バネの巻き上げを急激にしすぎても、ゆるめにしても最大の効果は得られません。最適な巻き上げを意識しつつも、チャレンジした取り組みも必要になります。そのあたりの微妙な調整が求められるのが春合宿でしょう。
 青春の貴重な時間に、自らの限界へのチャレンジをする若者は、得がたい経験を積み、その体験知がこれからの競技のみならず、それ以降のライフキャリアにとっても大きな財産となります。
 しっかりとスプリングを巻き込み、来たるべきシーズンに備えて欲しいと願っています。さらには、春合宿での経験を競技だけに留めず、今後のキャリアへ展開できる知へと伸ばしてくれることも期待しています。
[20160223 伊坂]


1月

    

【節目の年】

 今年は、リオデジャネイロで、オリンピック・パラリンピックが開催される年です。この大会へ出場する選手、関係者にとってはこれまでのトレーニングの集大成を表現する場となります。まさに、オリンピック・パラリンピック・イヤーは、選手にとって大きな節目の年です。この節目の年は、4年に1度しか回ってきません。選手の競技力(パフォーマンス)を維持・向上させるには、日頃のトレーニング、コンディショニングが重要であるのはいうまでもありません。大会日程に、バッチリとあわせて競技力をピークに持っていくことはトップアスリートにとって試合の成否を決めることになります。その日にあわせた周到で入念な準備が必要です。
 アスリートに限らず、成長過程においてもいくつかの節目となる年があります。学校への入学、卒業も大きな節目です。節目は、いわば成長の証と次への課題を示してくれます。伸びていく先(目標)を見通しながら、ある一定期間で成し遂げたことを評価し、そしてそこで一旦区切りをつけることで、次のステージへの出発をスムーズにできるのでしょう。 節目のつけ方は、人それぞれにありますが、年、あるいは年度ごとに考えるのが分かりやすいでしょう。「昨年はこんな年だった!来年はこんな年にしたい!」、というのも、単純ですが節目の切り方の一つです。今年は、申年なので、猿のように、「知恵」、「機敏」、「チームワーク」のある年にしたい、というのが当方の願いです。
 皆さんにとりまして、それぞれの『節目の年』となりますことを心より願っております。
[20160105 伊坂]


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